ASMLのEUV露光装置、中国流出疑惑に米国が懸念を表明

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米政府は、オランダの半導体製造装置大手ASMLが製造する最先端のEUV(極端紫外線)露光装置が中国に流出した可能性について懸念を示しています。しかし、ASML側はこの疑惑を強く否定しており、TechCrunchが報じたところによると、両者の間で主張が対立している状況です。

米国政府がASML製EUV露光装置の中国流出を懸念

Bloombergの報道によれば、米国商務長官は最近の一連の会議で、ASMLの幹部に対し、同社のEUV露光装置が中国に渡ったのではないかとの懸念を直接伝えたとされています。EUV露光装置は、世界で最も高度な半導体パターンを形成できる唯一のツールであり、最先端チップ製造に不可欠な存在です。

米国は、トランプ政権時代からASMLのEUV装置が中国に販売されることを禁じる輸出規制を課しており、もし流出が事実であれば、この規制に対する重大な違反となります。米政府高官はEUV関連部品や輸送機器が中国に出荷された証拠があると主張しているものの、BloombergやASML自身に対して具体的な証拠は提示されていないと報じられています。ASMLは、中国にEUV装置が存在したことは一度もなく、現在も存在しないと断固として否定しています。

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ASMLは疑惑を否定し、厳格な管理体制を強調

ASMLのクリストフ・フーケCEOは、同社がこれまでに出荷した全ての装置を厳密に追跡していると説明しています。稼働中の装置は顧客によって監視されており、使用を終えた装置は解体されASMLに返却されるとのことです。また、EUV技術、関連文書、トレーニングへのアクセスは厳しく制限されており、中国を拠点とする従業員はEUV技術にアクセスできないよう、社内で厳格な情報隔離体制が構築されていると述べています。

フーケCEOは、EUV装置の開発には20年以上の歳月と莫大な費用がかかり、その技術は極めて複雑であるため、一度も実機に触れたことのない者がリバースエンジニアリングで再現することは不可能だとの見解を示しています。ASMLは、旧世代のDUV(深紫外線)露光装置は中国に販売していますが、これは意図的に技術的な世代差を保ちつつ、顧客との関係を維持するための戦略的な判断であり、輸出規制を回避する抜け穴ではないと強調しています。中国市場からの売上は、2026年のASMLの総売上の約20%を占めると予想されており、同社にとって重要な収益源となっています。

半導体産業におけるASMLの絶対的地位

ASMLは、一般にはあまり知られていない企業かもしれませんが、Nvidiaや大手クラウドプロバイダーと並び、世界のAI開発を支える上で極めて重要な役割を担っています。同社はEUVリソグラフィ技術を独占しており、最先端チップの微細な回路パターンを印刷できる唯一の装置を提供しています。NvidiaやAppleのチップを製造するTSMCをはじめとする主要な半導体ファウンドリは、ASMLの装置に全面的に依存しています。

この独占的な地位により、ASMLは欧州で最も価値のある公開企業となり、過去1年間でAIチップの需要が急増したことを背景に、時価総額は約7,000億ドルに達しています。もしEUV装置が中国の手に渡ったとすれば、米国の輸出規制体制にとって極めて重大な違反となり、中国の軍事および産業基盤から高度なAI能力を遠ざけるという米国の戦略に大きな打撃を与えることになります。

疑惑の背景にある米国の思惑と新たな動き

今回のASMLを巡る疑惑の背景には、米国の半導体技術覇権における複雑な思惑が見え隠れします。米国商務省は、ASMLのEUV独占に対抗しうる次世代光源技術を開発するスタートアップ「xLight」に最大1億5,000万ドルの公的資金を投じています。xLightのCEOは、自社をASMLのライバルではなくパートナーと位置づけていますが、ASMLのフーケCEOは、自社がxLightの技術を必要としているとは考えていないと述べています。

また、ピーター・ティール氏が支援する別のスタートアップ「Substrate」も、ASMLのEUV技術に直接対抗する独自の技術開発を進めています。さらに、米国議会では、EUVだけでなく、ASMLが中国に販売している旧世代のDUV装置の輸出も実質的に禁止する超党派法案が審議されており、これは同社の2026年予想売上の約5分の1に影響を与える可能性があります。これらの動きと今回の流出疑惑との間に公的なつながりはありませんが、米国政府がASMLの独占的地位と中国への技術流出に強い関心を持っていることは明らかです。

【管理人の視点】日本の半導体産業への影響と地政学的リスク

ASMLのEUV露光装置を巡る米中間の緊張は、日本の半導体産業にも間接的に大きな影響を及ぼす可能性があります。ASMLの技術は、日本の大手半導体メーカーやファウンドリ(受託製造会社)が最先端チップを生産する上で不可欠であり、サプライチェーンの安定性は日本の経済安全保障に直結します。

米国が中国への輸出規制をさらに強化する動きは、東京エレクトロンなどの日本の半導体製造装置メーカーの事業戦略にも影響を与えるでしょう。中国市場は多くの日本企業にとって重要な顧客であり、規制の拡大はビジネス機会の制約につながる可能性があります。また、最先端チップの供給が不安定になれば、日本のエレクトロニクス製品や自動車産業など、幅広い分野に影響が及ぶことも考えられます。日本のユーザーが直接ASMLの装置を購入することはありませんが、スマートフォンやPC、AIデバイスといった最終製品の性能向上や価格にも、こうした地政学的な動向が影響を及ぼす可能性があるため、今後の展開を注視する必要があります。

まとめ

ASMLのEUV露光装置を巡る米国政府とASMLの間の対立は、単なる企業と政府の問題に留まらず、米中間の技術覇権争いの象徴として、世界の半導体サプライチェーンに深刻な不確実性をもたらしています。ASMLがその独占的技術と厳格な管理体制を主張する一方で、米国は中国への先端技術流出を阻止するため、多角的なアプローチで圧力を強めています。この動きは、半導体産業全体の構造変化を促し、今後の技術開発や国際協力のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。

情報元:TechCrunch

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