Apple Watchの重要な健康機能である血中酸素濃度測定を巡る、Appleと医療技術企業Masimoとの長きにわたる特許紛争に新たな進展がありました。国際貿易委員会(ITC)は、Appleが再設計したApple Watchの血中酸素機能がMasimoの特許を侵害していないとの判断を再審査しないことを決定。これにより、米国におけるApple Watchの一時的な輸入禁止措置が事実上解除され、ユーザーは引き続きこの機能を利用できるようになります。
この決定は、Appleがウェアラブルデバイス市場で提供する健康機能の継続性を保証するものであり、同社のイノベーション戦略にとって大きな勝利と言えるでしょう。しかし、Masimo側は控訴の可能性も示唆しており、法廷闘争が完全に終結したわけではありません。
Apple Watch血中酸素機能、長きにわたる特許紛争の背景
Apple Watchに搭載された血中酸素濃度測定機能は、ユーザーの健康状態を日常的にモニタリングできる画期的な機能として広く評価されてきました。しかし、この機能の根幹をなす技術を巡り、Appleは2020年代初頭から医療技術企業Masimoと激しい特許紛争を繰り広げてきました。Masimoは、Apple Watchの血中酸素センサーが自社の特許を侵害していると主張し、ITCに輸入禁止措置を求める訴えを起こしていました。
この訴訟は複数の段階を経て進行し、一時はITCがMasimoの主張を認め、米国での特定のApple Watchモデルの輸入および販売を一時的に禁止する決定を下しました。この措置を回避するため、Appleは対象となるApple Watchモデルの血中酸素機能を一時的に無効化するか、あるいは機能を再設計する必要に迫られました。Appleは後者の道を選び、血中酸素測定プロセスの一部をApple WatchからiPhone側に移行させることで、特許侵害を回避する新たなバージョンを開発しました。
この再設計は、Appleが特許紛争に直面した際に、いかに迅速かつ柔軟に対応できるかを示す事例となりました。技術的な課題をクリアしつつ、ユーザー体験を損なわない形で機能を維持しようとするAppleの姿勢が浮き彫りになったと言えるでしょう。

ITCがAppleの再設計版を「特許侵害なし」と判断
今回の決定に至るまでには、いくつかの重要な段階がありました。まず、ITCの行政法判事モニカ・バッタチャリヤ氏は、Appleが再設計したApple Watchの血中酸素機能がMasimoの特許を侵害していないとの初期判断を下しました。これと並行して、連邦巡回控訴裁判所は、Apple Watchの元の血中酸素機能に対する輸入禁止命令を支持する判断を示しており、これは元の機能が依然として禁止されていることを意味します。
そして今回、ITCは行政法判事の「特許侵害なし」という判断を再審査しないことを決定しました。これは、MasimoがApple Watchの輸入禁止措置を再開させようとした試みが退けられたことを意味し、Appleにとって大きな法的な勝利となります。
ITCの決定文では、以下のように述べられています。
「2026年3月18日、行政法判事は、再設計された製品が主張された特許の請求項を侵害していないと結論付ける執行初期決定(EID)を発行した。2026年3月25日、MasimoとAppleはそれぞれEIDの委員会審査を求める請願書を提出した。2026年3月30日、両当事者はそれぞれの請願書に対する回答を提出した。委員会はEIDを審査しないことを決定した。この統合された手続きは、再設計された製品が主張された特許を侵害していないとの結論をもって、その全体が終了する。したがって、限定的排除命令(LEO)の条件に従って排除されるべきではない。」
この決定に対し、Appleは9to5Macへの声明で感謝の意を表明し、「この重要な健康機能をユーザーに提供し続けられることを保証するITCの決定に感謝します。6年以上にわたり、MasimoはAppleに対して執拗な法的キャンペーンを繰り広げてきましたが、その主張のほとんどは却下されてきました。私たちは常に私たちのイノベーションを守り、世界最高の製品とサービスをユーザーに提供することに注力し続けます」とコメントしました。Appleはまた、再設計された血中酸素機能に加え、ECGアプリや高血圧・不規則な心拍通知など、他の健康機能も米国ユーザーに提供し続けられることを喜んでいると述べています。
ユーザーへの影響と今後の展望:Apple Watchの健康機能は継続
今回のITCの決定は、Apple Watchユーザーにとって朗報です。米国市場において、再設計されたApple Watchの血中酸素機能が引き続き利用可能となるため、ユーザーは自身の健康状態をより詳細に把握し、早期の異常発見に役立てることができます。Apple Watchは、心電図(ECG)アプリ、不規則な心拍通知、転倒検出、緊急SOSなど、多岐にわたる健康・安全機能を提供しており、血中酸素機能はその中でも特に重要な指標の一つです。
Appleは、これらの健康機能の開発に多大な研究と労力を費やしており、ユーザーのプライバシー保護にも強く焦点を当てています。今回の決定は、Appleが健康分野におけるイノベーションを継続し、ユーザーの生活の質向上に貢献していく姿勢を改めて示すものと言えるでしょう。
こんな人におすすめ:Apple Watchの健康機能に期待するユーザーへ
今回の決定は、Apple Watchの購入を検討している方、特に健康管理に役立つ機能を重視する方にとって、安心材料となるでしょう。血中酸素濃度は、呼吸器系の健康状態や睡眠時無呼吸症候群の兆候などを把握する上で重要なデータです。また、心臓の健康状態をモニタリングしたい方、日々の活動量や運動量を記録したい方にも、Apple Watchは最適なデバイスであり続けるでしょう。
ただし、Masimoは今回の決定に対して控訴する可能性を残しており、法廷闘争が完全に終結したわけではありません。しかし、現時点ではApple Watchの血中酸素機能は米国で合法的に提供され続けることになります。
まとめ
AppleとMasimoの間のApple Watch血中酸素機能に関する特許紛争は、ITCがAppleの再設計版を特許侵害なしと判断し、輸入禁止措置を再審査しないことを決定したことで、Appleにとって大きな勝利となりました。これにより、米国市場のApple Watchユーザーは、引き続きこの重要な健康機能を利用できるようになります。
この決定は、Appleがウェアラブルデバイスの健康機能分野におけるリーダーシップを維持し、イノベーションを推進していく上で重要な意味を持ちます。今後もMasimoからの控訴の可能性は残るものの、現時点でのApple Watchの販売と機能提供には影響がないと見られます。ウェアラブルデバイスが提供する健康データの重要性が高まる中、このような特許紛争は今後も業界の動向を左右する要因となるでしょう。
情報元:9to5mac.com

