人気海洋サバイバルゲームの続編『Subnautica 2』の早期アクセス開始時期を巡り、開発スタジオUnknown WorldsとパブリッシャーKraftonの間で法廷闘争が泥沼化しています。裁判所命令によってCEOに復帰したTed Gill氏が、Kraftonが裁判所の決定に反してゲームの発売日を意図的にリークしたと主張しており、ゲームのリリース計画に大きな混乱が生じています。
この問題は、単なる発売日の発表に留まらず、パブリッシャーと開発スタジオ間の権限、信頼、そしてゲーム業界における倫理的な問題にまで発展する可能性を秘めています。
『Subnautica 2』を巡る泥沼の法廷劇の背景

『Subnautica 2』の開発元であるUnknown Worldsは、2021年に韓国の大手ゲーム企業Kraftonに買収されました。しかし、この買収後、両社の関係は常に円満だったわけではありません。特に、Unknown Worldsの共同創業者でありCEOを務めていたTed Gill氏が一時的に解雇されたことが、今回の法廷闘争の大きな引き金となっています。
2026年3月16日、デラウェア州の裁判官Lori Will氏は、Gill氏をUnknown WorldsのCEOに復帰させるよう命じました。さらに重要なのは、この命令には「『Subnautica 2』の発売計画に関する全権限はGill氏にある」という内容が含まれていたことです。これは、ゲームのリリース時期やマーケティング戦略といった重要な決定を、パブリッシャーであるKraftonではなく、開発スタジオのトップであるGill氏が主導すべきであるという明確な指示でした。
過去には、Kraftonが共同創業者への支払いを回避するためにAIチャットボットの助言を求めた疑惑や、「AIファースト」戦略を推進する中で自主的なレイオフを奨励したといった報道もあり、両社の間には以前から深い溝があったことが示唆されています。このような背景が、今回の発売日リーク疑惑をより複雑なものにしています。
パブリッシャーによる発売日リーク疑惑とCEO側の主張
裁判所がGill氏のCEO復帰と権限を認めたわずか数日後の3月19日、事態は急展開を見せました。IGNが、KraftonがUnknown Worldsに配置していたエグゼクティブ、Steve Papoutsis氏による内部メモを報じたのです。このメモには、『Subnautica 2』の早期アクセスが5月に開始されるという情報が含まれていました。その後、Kraftonはこのリリース時期をKotakuを含む複数のメディアに確認しました。
これに対し、Gill氏と共同創業者側の弁護士は、直ちに裁判官Will氏に書簡を送付し、Kraftonの行為が裁判所命令に違反する「意図的なリーク」であると強く主張しました。Gill氏側の弁護士は、Kraftonが「ゲーム、チーム、コミュニティへの影響を顧みず、自己都合で発売を発表した」と指摘。ゲームのリリース発表は通常、大規模なマーケティング活動、ファンファーレ、コミュニティとの連携を伴い、ゲームへの期待感を最大限に高めるために慎重に計画されるべきものであると強調しました。
しかし、Kraftonが裁判所の命令を無視してこのプロセスを奪ったことで、ゲームにさらなる損害を与え、『Subnautica』コミュニティに混乱を招いていると訴えています。Gill氏側は、Kraftonの行為が「法廷侮辱罪」にあたる可能性を示唆し、裁判官に厳正な対処を求めています。
Krafton側の反論と両者の溝
Gill氏側の主張に対し、Krafton側も黙ってはいませんでした。翌3月20日、Kraftonの弁護士も裁判官Will氏に書簡を送り、自社の行為が裁判所命令に違反していないと反論しました。
Krafton側の主張によれば、Papoutsis氏のメモは、Kraftonが裁判所命令が出る前に『Subnautica 2』が早期アクセスリリース準備が整っていると判断した「過去の出来事」に対するUnknown Worldsの従業員の努力を称えるものであったと説明しています。彼らは、マイルストーンレビューの結果を伝えたり、開発チームの献身と才能に感謝したりすることに何ら不適切な点はなかったと主張しています。
さらにKraftonの弁護士は、Gill氏がCEOとして『Subnautica 2』のリリース時期を決定する権限は依然として保持されており、Papoutsis氏のメッセージがGill氏の権限や裁量を変更するものではないと強調しました。しかし、Gill氏側の弁護士は、Kraftonがメディアに発売日をリークし、その後それを確認した行為自体が、Gill氏の権限を侵害し、裁判所命令に反すると考えており、両者の主張は真っ向から対立しています。
現時点では、裁判官Will氏はこの両者からの書簡に対し、まだ公式な回答を出していません。両者は今週中に会合を開き、裁判官の裁定に沿った和解案を提出するよう命じられています。
この法廷闘争が『Subnautica 2』とゲーム業界に与える影響
この法廷闘争は、『Subnautica 2』のリリーススケジュールに直接的な不確実性をもたらすだけでなく、ゲーム業界全体におけるパブリッシャーと開発スタジオの関係性、特に買収後のスタジオ運営における課題を浮き彫りにしています。
ゲーム開発への影響とユーザーの懸念
まず、開発チームの士気や集中力への影響は避けられないでしょう。経営陣の対立が公になることで、開発者は本来のゲーム制作に専念しにくくなる可能性があります。また、早期アクセス開始時期が不透明になることで、ゲームを待ち望むコミュニティには大きな混乱と不信感が広がっています。発売日発表は、通常、ユーザーの期待感を高めるための重要なイベントですが、今回の件はむしろ不安を煽る結果となっています。
パブリッシャーと開発スタジオの権限問題
この事例は、パブリッシャーが開発スタジオを買収した後、どこまで開発の自主性を尊重すべきかという、ゲーム業界で長年議論されてきたテーマを再び提起しています。特に、裁判所が開発スタジオのCEOに発売計画の全権限を与えたにもかかわらず、パブリッシャーがそれに反する行動を取ったとされる点は、今後の業界の慣行や契約のあり方に大きな影響を与える可能性があります。
早期アクセスモデルの信頼性
早期アクセスは、開発中のゲームをユーザーに提供し、フィードバックを得ながら完成度を高めていくというメリットがあります。しかし、今回のケースのように、リリース計画自体が法廷闘争の対象となることで、早期アクセスモデル全体の信頼性にも疑問符がつきかねません。ユーザーは、安定した開発体制と明確なロードマップを期待しているため、このような混乱は避けるべきです。
こんな人におすすめ:『Subnautica 2』の動向を追うゲーマーと業界関係者へ
このニュースは、『Subnautica』シリーズのファンはもちろんのこと、ゲーム業界のビジネスモデルや法的な側面に関心のある方々にとって、非常に重要な情報源となるでしょう。パブリッシャーと開発スタジオ間の複雑な関係性、そしてそれがゲームのリリースや品質にどう影響するかを理解するための貴重な事例です。今後の裁判所の判断や、Ted Gill氏が最終的にどのようなリリース計画を決定するのか、引き続き注目が集まります。
まとめ
『Subnautica 2』の早期アクセス開始時期を巡る法廷闘争は、パブリッシャーKraftonと開発スタジオUnknown Worldsの間の根深い対立を浮き彫りにしました。裁判所命令で復帰したCEOの権限をKraftonが侵害したとされるこの問題は、ゲームのリリース計画に大きな不確実性をもたらし、開発チームやコミュニティにも影響を与えています。今後の裁判所の判断が、ゲーム業界におけるパブリッシャーと開発スタジオの関係性、そしてゲームの未来にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していく必要があります。
情報元:Kotaku

