米国GDC、海外開発者の参加が激減か?「安全ではない」との声
毎年サンフランシスコで開催される世界最大のゲーム開発者会議「Game Developers Conference(GDC)」が、今年は多くの海外開発者の不参加に直面する可能性が報じられています。彼らは、米国への渡航に対する安全性の懸念や、特定のマイノリティグループ、トランスジェンダー、政治的見解を持つ人々への敵意が背景にあると語っています。
高まる米国渡航への不安
海外の開発者たちがGDCへの参加をためらう主な理由の一つは、米国への渡航に対する安全性の懸念です。特に、トランプ政権下での入国審査の厳格化や、不法移民取り締まりの拡大、観光客への厳しい審査が報じられており、これが業界全体に広範な旅行不安を引き起こしています。
- Godot Foundationのエグゼクティブディレクター、エミリオ・コッポラ氏(スペイン在住)は、「米国出身でない人で、次のGDCに行く予定の人は誰も知らない。以前から完全に安全だと感じていたわけではないが、今はリスクを冒したくない」と述べています。
- フランス・レバノン国籍のインディースタジオ「Le Cabinet du Savoir」のクリエイティブディレクター、ナジ・ファレス氏は、「欧州市民が米国に対する見解を理由に国境警備隊に逮捕されたという話を聞くと、自分で試したいとは思わない」と語っています。
また、COVID-19パンデミック以降、対面イベントの価値が低下したと感じる開発者も少なくありません。
国境での厳しい尋問と個人的な対策
2025年のGDCでは、国境での厳しい尋問を経験した開発者もいました。フリーランスで「Pamplemousse Games」のオーディオディレクターを務めるネハ・パテル氏は、2025年の渡航時、「国境警備官の尋問が非常に厳しく、雇用、役割、スタジオについて多くの質問をされた。アメリカのクライアントはいない、フリーランスではないと嘘をついた。怖かった」と証言しています。
このような状況を受け、企業や個人で対策を講じる動きも見られます。
- ある大手スタジオの開発者(匿名)は、「昨年、スタジオの代表者全員が追加の安全説明を受け、ICEや入国管理で問題が発生した場合に備えて法的書類を準備した。幸い誰も問題はなかったが、参加者や不参加者の間には明確な不安があった。2026年は物理的な参加は予定していない」と語っています。
- アムステルダムの「Twirlbound」のシニアプロデューサー、JCラウ氏は、2017年以降毎年GDCに参加していますが、万が一に備え、旅程、パスポート、身分証明書、講演者情報などを、参加しない少なくとも3人に送り、指定時間までに連絡がなければオーストラリア領事館に情報を持っていくよう指示したといいます。
- コッポラ氏も、問題になりそうな投稿がないか、ソーシャルメディアのタイムラインを削除したと明かしています。
政治的・社会的な懸念とサンフランシスコの治安
政治的見解やジェンダーアイデンティティに基づく差別への懸念も、渡航をためらう大きな理由です。オーストリアを拠点とする「Cohop Game」の創設者、エリン・マイレス氏は、「英国/ドイツの観光客が拘束されたという記事をいくつか読み、それが決定打となった。自分の政治的見解がインターネットで簡単に見つかるため、安全だと感じない」と述べています。
また、長年のGDC参加者であるインディー開発者のラミ・イスマイル氏は、「アラブ系の名前が多く、アラブ系の雰囲気があるため、米国への渡航は安全だと感じたことがない。新しい暴力的な政権下では、渡航は安全ではない。以前はひどかったが、今では私の白人の友人も私と同じように扱われている」と、人種差別的な経験に言及しています。
トランスジェンダーの開発者からは、自身のジェンダーアイデンティティが米国での不当な扱いに繋がる可能性を懸念する声も上がっています。トロントを拠点とするフリーランスプロデューサーのフェリックス・クレイマー氏は、「IDは女性だが、自分を隠そうとしないトランス男性だ。国境だけでなく、非市民として負傷した場合など、問題が発生した場合に、合法的に偏見を行使する方法が増えていることが心配だ」と語っています。
さらに、GDCが開催されるサンフランシスコ市内の治安悪化も懸念されています。長年の参加者からは、暴行の危険性、路上でのホームレスの増加、公然とした薬物使用などが指摘されており、デンマークのインディー開発者マーティン・ピッチルマイヤー氏は、「多額の資金があるにもかかわらず、皆のために場所を良くするために使わないのは、非常に冷酷に感じる」と、市の社会問題への対応に疑問を呈しています。
GDC側の対応と今後の展望
GDCの主催者側は、参加者の安全確保のため、24時間体制の安全ホットラインの設置や、サンフランシスコ市内での移動に不安を感じる参加者への警備員によるエスコートを提供しています。また、GDCの広報担当者は、「現在の米国の政治情勢が不確実性を生み出していることを理解しており、地方当局や法律専門家と協力して変更を監視し、適宜更新していく」と述べています。
しかし、こうした努力にもかかわらず、多くの開発者は、米国のリーダーシップや国境政策に大きな変化がない限り、米国でのイベントに戻ることはできないと語っています。カナダを拠点とする「Motive Studio」のライター、アシュリー・クーパー氏は、「世界中に友人がおり、GDCは彼らと直接会える場所だ。コミュニティを見つけ、多くの友人に会える年に一度の機会なので残念だ」と、失われる交流の機会への後悔を表明しています。
パテル氏も、「高額な費用、ひどい立地、そして包括性の欠如にもかかわらず、GDCが私のキャリアを助けてくれたことは認めざるを得ない。奨学金や助成金のおかげで経済的に参加できた。しかし、どんなに多くの助成金や機会があっても、アメリカの土を踏むことはできない」と、強い決意を語っています。

