米国のテクノロジーメディア「Wired.com」は、Appleが中国の規制当局からの命令を受け、同国のApp Storeから多数のLGBTQ+(主にゲイ向け)のマッチングアプリを削除したと報じました。
この措置は、中国国内におけるLGBTQ+コミュニティへのアクセスや表現に対する、政府による管理強化の新たな一例として注目されています。
この記事では、Wiredが報じたAppleによる中国でのアプリ削除の背景と詳細について解説します。
Wiredが報じた「アプリ大量削除」の詳細
Wired.comによると、今回の削除は突然行われ、複数のアプリ開発者が影響を受けました。
- 削除されたアプリ: 少なくとも27のLGBTQ+関連アプリ(主にゲイのユーザーを対象としたソーシャルおよびマッチングアプリ)が、中国のApp Storeから削除されました。
- 削除の理由: Appleは影響を受けた開発者に対し、「中国サイバースペース管理局(CAC)」から、これらのアプリが中国の法律に違反しているとの指摘があったためだと通知しました。
- 当局の主張: Wiredが確認した情報によれば、CACはこれらのアプリが「ポルノグラフィやその他の違法なコンテンツを広めている」として、国家のインターネット規則に違反していると主張しています。
今回の措置により、以前(2022年)に削除された世界最大のゲイ向けアプリ「Grindr」の代替として機能していた多くの人気アプリが、中国国内のユーザーの手から奪われることになりました。
背景にある中国の「検閲」とLGBTQ+コミュニティへの圧力
Wiredの記事は、今回のアプリ削除が単なる「違法コンテンツ」の取り締まりではなく、より広範な政治的文脈の中で起きていると指摘しています。
近年、中国政府はLGBTQ+の権利や表現に対する圧力を強めています。同性愛は中国で犯罪ではありませんが、関連するコンテンツ、イベント、オンラインコミュニティは厳しく監視され、検閲の対象となるケースが増えています。
Wiredは、今回のゲイ マッチングアプリの一斉削除も、オンライン上のコミュニティスペースを制限しようとする政府の動きの一環であると分析しています。
巨大市場と人権のジレンマ:Appleの立場
この問題において、Appleは再び難しい立場に立たされています。
Appleは公式に「事業を展開する国や地域の法律に従う義務がある」というスタンスを取っています。中国はAppleにとって最大の製造拠点であり、非常に重要な市場の一つです。そのため、中国当局の要請に従うことは、ビジネスを継続する上で避けられない側面があります。
しかしその一方で、Appleは「多様性」や「表現の自由」を企業理念として掲げています。
人権擁護団体や批評家からは、Appleが中国政府の検閲に事実上加担し、LGBTQ+コミュニティのような脆弱なグループの権利を犠牲にしているとの批判が上がっています。
Wiredの報道は、巨大テクノロジー企業がグローバルに事業を展開する上で、各国の法律や政治的圧力と、自社の掲げる価値観との間でいかに深刻なジレンマに直面しているかを浮き彫りにしています。
まとめ:中国App Storeと表現の自由
Wired.comが報じた「Apple 中国 アプリ削除」のニュースは、テクノロジーと政治が交差する現代の複雑な問題点を象徴しています。
- Appleは中国当局の要請に基づき、27以上のLGBTQ+アプリを中国App Storeから削除しました。
- 当局は「違法コンテンツ」を理由としていますが、背景にはLGBTQ+コミュニティへの圧力強化があると見られています。
- Appleは「現地の法律遵守」を理由としていますが、「検閲への加担」だとして外部からの批判に直面しています。
中国市場におけるApp Storeの運営方針は、今後も表現の自由と企業の社会的責任を巡る議論の焦点であり続けるでしょう。

