OpenAI、Amazon (AWS)と38億ドルのクラウド契約を締結か ─ Microsoft Azureへの依存分散が狙い

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ChatGPTの開発元であるOpenAIが、Amazon Web Services (AWS)と38億ドル(約5800億円※)規模のクラウド契約を締結したと報じられています。 (※1ドル152円換算)

OpenAIは最大の投資家であるMicrosoftと強固なパートナーシップを結んでおり、主にAzureクラウドを利用していますが、なぜ今、その競合とも言えるAWSとの大型契約に至ったのでしょうか。

本記事では、この注目の契約が持つ意味と、AI開発を支えるクラウドインフラ市場の動向について、詳しく解説します。

なぜAWS? 巨大AIを支えるインフラの必要性

OpenAIが開発するGPT-4oのような高度なAIモデルは、そのトレーニング(学習)と運用(推論)に、膨大な量のコンピューティングリソースを必要とします。

これまでOpenAIは、Microsoftから受けた130億ドル以上とされる巨額の投資(その多くはAzureの利用クレジットと見られています)を背景に、Microsoft Azureを主要なインフラとして利用してきました。

しかし、AI開発の規模が拡大し続ける中、単一のクラウドプロバイダーに依存することは、リソースの逼迫(ひっぱく)や障害発生時のリスクを伴います。

Microsoft Azure依存からの分散戦略

今回報じられたOpenAIとAWSの契約は、この「単一インフラへの依存」を避け、AI開発基盤を多様化・分散させるための戦略的な一手と考えられます。

  • リスク分散: 特定のプラットフォームで障害やリソース不足が生じた場合でも、他のプラットフォームで運用を継続できます。
  • コストとパフォーマンスの最適化: AWSは、AIのトレーニングや推論に特化した独自のカスタムチップ(例: Trainium, Inferentia)を提供しています。OpenAIは、ワークロード(タスク)の特性に応じて、AzureとAWSの最適なリソースを使い分けることで、コスト効率や処理性能の向上を図る可能性があります。

38億ドル契約の詳細

報道によると、この38億ドルという金額は、OpenAIが今後5年間でAWSのサービス利用に費やすとコミットした(または予想される)額とされています。

これは、AI開発競争がいかに莫大なコストを必要とする「資本集約的」なものであるかを明確に示しています。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が常々語っているように、将来のAGI(汎用人工知能)の実現には、天文学的な規模のインフラ投資が必要となるのです。

激化する「AIクラウド」の覇権争い

この一件は、AI時代のインフラを誰が握るかという、クラウド市場の巨人たちによる覇権争いを象徴しています。

  • Microsoft (Azure): OpenAIとの強力なパートナーシップを核に、Azure AIサービスを積極的に展開しています。
  • Amazon (AWS): OpenAIのライバルであるAnthropic(アンソロピック)にも巨額の投資を行い、独自のAIチップを武器に、多くのAIスタートアップの受け皿となっています。
  • Google (Google Cloud): 独自のAIモデル「Gemini」や高性能チップ「TPU」を武器に、両社を猛追しています。

OpenAIがMicrosoftと密接な関係にありながらもAWSを大規模に利用するという事実は、AI開発企業が特定のプラットフォームに縛られず、最適なリソースを求めて複数のクラウドを併用する「マルチクラウド戦略」が主流になりつつあることを示唆しています。

まとめ

今回報じられたOpenAIとAWSの38億ドル規模の契約は、単なる取引を超え、AI開発の未来を左右するインフラ戦略の転換点となる可能性があります。

OpenAIは、主要パートナーであるMicrosoft Azureへの依存を維持しつつも、AWSという選択肢を加えることで、AI開発の安定性と効率性を高めようとしています。AIインフラ市場におけるクラウド大手間の競争は、今後さらに激化していくことでしょう。

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