Thypochは、コンパクトなシネマプライムレンズシリーズ「Simera-C」に、新たな超広角モデル「16mm T1.9」を追加しました。この新レンズは、ソニーEマウントとライカMマウントに対応し、既存のSimera-Cシリーズのラインナップをさらに充実させるものです。特に、超広角ながらも歪曲収差を極限まで抑え、コンパクトな設計を維持している点が大きな特徴と言えるでしょう。また、この16mmレンズを含む6本レンズキットも同時に発表され、映像クリエイターはより幅広い焦点距離をカバーできるようになります。
Thypoch Simera-Cシリーズの進化と16mm T1.9の登場
Thypoch Simera-Cシリーズは、姉妹ブランドであるDZOFILMとの共同開発によって誕生し、そのリリース以来、着実に焦点距離の選択肢を広げてきました。当初は28mm、35mm、50mm、75mmの4本で構成されていましたが、その後21mmが追加され、さらにライカMマウント版も登場するなど、ユーザーのニーズに応じた拡張が続けられてきました。そして今回、シリーズ中最広角となる16mm T1.9が加わることで、Simera-Cは超広角から中望遠までを網羅する、より完成度の高いレンズシステムへと発展しました。
この16mmレンズは、広角撮影における光学設計の複雑さを考慮し、シリーズの他のレンズ(T1.5)とは異なり、開放F値がT1.9に設定されています。しかし、そのわずかなF値の差を補って余りある、優れた光学性能とコンパクトさを両立させているのが特筆すべき点です。フルサイズセンサーをカバーする最大イメージサークル43.2mmを持ち、Super 35およびAPS-Cフォーマットにも対応するため、幅広いカメラシステムで活用できます。
妥協なき光学性能:8K対応と低歪曲を実現するThypochレンズ
Thypoch Simera-C 16mm T1.9は、そのコンパクトなボディに高度な光学設計を凝縮しています。11群15枚のレンズ構成には、非球面レンズ、低分散レンズ、高屈折率レンズが効果的に組み合わされており、これにより優れた画質を実現しています。Thypochの発表によると、中心解像度は85 lp/mmに達し、8K解像度にも対応する高い描写力を誇ります。
超広角レンズで課題となりがちな歪曲収差も、このレンズではほぼゼロに抑えられているとされています。これにより、建築物や風景など、直線が重要な被写体を撮影する際にも、自然で正確な描写が期待できます。また、フォーカスブリージング(ピント位置の変更に伴う画角変動)もゼロに設計されており、プロフェッショナルな映像制作において、スムーズなフォーカスワークを可能にします。
絞り機構は、シリーズ全機種で共通の16枚羽根を採用。これにより、あらゆる絞り設定で円形に近い美しいボケ味と、クリーンで自然なハイライト表現を実現し、映像に深みと芸術性を加えることができます。対角画角106度という広大な視野は、狭い空間での撮影や、壮大な風景を捉える際に大きなアドバンテージとなるでしょう。
コンパクト設計と一貫した操作性
Thypoch Simera-C 16mm T1.9は、その超広角性能にもかかわらず、非常にコンパクトで軽量に設計されています。Eマウント版の全長は79.3mm、Mマウント版は69.6mmと、既存のSimera-Cシリーズに自然にフィットするサイズ感です。重量もEマウント版が490g、Mマウント版が467gと、21mm単焦点レンズとほぼ同等であり、ジンバルや手持ち撮影など、機動性が求められるワークフローにおいて大きなメリットとなります。
フィルター径はM62×0.75を採用しており、これはシリーズの21mm、28mm、35mm、50mm単焦点レンズと共通です。これにより、フィルターワークの際に複数のサイズのフィルターを用意する必要がなく、効率的な運用が可能です(75mmのみM67フィルターネジ)。
操作性においても、Simera-Cシリーズの一貫した設計思想が貫かれています。フォーカスリングと絞りリングの両方に0.8 MODのギアピッチが採用されており、フォローフォーカスシステムとの連携が容易です。また、210°という広いフォーカス回転角は、精密なピント合わせを可能にし、第一アシスタントカメラマンや単独オペレーターでも快適なマニュアル操作を実現します。最短撮影距離はセンサー面からわずか0.16mと、ラインナップ中最短であり、被写体に大胆に寄ったクローズアップショットも可能にします。この近接撮影性能は、フローティング要素群の採用によって実現されており、固定要素群を持つ改造レンジファインダーレンズと比較して、より優れた性能を発揮するとThypochは強調しています。
多様な撮影環境に対応する幅広い互換性
Thypoch Simera-C 16mm T1.9は、ソニーEマウントとライカMマウントの両方で出荷されます。特にMマウント版は、その汎用性の高さから、複数のカメラシステムが混在するプロの制作現場において大きな柔軟性を提供します。標準的なアダプターを使用すれば、Lマウント、キヤノンRF、ニコンZ、富士フイルムXなど、様々なミラーレスカメラマウントに対応可能です。これにより、異なるブランドのカメラを使用する際にも、レンズ資産を有効活用できるでしょう。
さらに、XPIMAGE製M-to-ARRIマウントのようなサードパーティ製ロックアダプターを介することで、Simera-CシリーズはARRI Alexa Mini LF、Alexa Mini、Amiraといったプロフェッショナルシネマカメラや、ソニーVENICEでも使用できるとされています。これは、コンパクトなシネマレンズでありながら、ハイエンドな制作環境にも対応できるポテンシャルを示しています。
また、そのコンパクトなサイズは、DJI Ronin 4DのZenmuse X9のような特殊なジンバルシステムとの相性も抜群です。マウントを交換するだけでカウンターウェイトを必要とせずに装着できる数少ないシネマレンズの一つであり、DJI Focus Proや類似のオートフォーカスモーターシステムとの互換性も明記されています。これにより、軽量なジンバル構成でマニュアルMマウントレンズを外部モーターで駆動するといった、現代の映像制作における多様なニーズに応えることが可能です。
映像制作を網羅する6本レンズキットとアクセサリー
16mmレンズの単体発売に加え、ThypochはSimera-Cシリーズの全焦点距離を網羅する「6本レンズキット」を発表しました。このキットには、新開発の16mm T1.9に加え、既存の21mm、28mm、35mm、50mm、75mmの単焦点レンズが含まれており、ソニーEマウントまたはライカMマウントのいずれかを選択できます。これは同ブランドが提供するSimera-Cパッケージの中で最も充実した構成となり、従来の5本レンズセットに代わるフラッグシップモデルとして位置づけられます。
キット全体のレンズ重量は、最も軽い75mm Mマウントの353gから、最も重い21mm Eマウントの491gの範囲に収まっており、セット全体でも3kgを大幅に下回ります。これにより、焦点距離が変わってもジンバルの再調整や手持ち撮影時のバランス感覚の大きな変化を抑えられ、一貫した操作感で撮影に集中できるメリットがあります。また、Thypochは6本セット専用の金属製ハードケースと、それに合わせたサイズの特注フォームインサートも発売。フォームインサートは、Pelican製ケースに対応したカットが施されており、既にハードケースを所有している映像制作者も活用できるよう配慮されています。
価格と発売時期
Thypoch Simera-C 16mm T1.9の単体価格は、ソニーEマウント版が879米ドル、ライカMマウント版が959米ドルです。6本レンズキットは、Eマウント版が4,369米ドル、Mマウント版が4,849米ドルで提供されます。専用メタルハードケースは199米ドル、カスタムフォームインサートは構成に応じて50米ドルまたは80米ドルで販売されます。
独自の視点:Thypochレンズが切り拓く映像表現の可能性
Thypoch Simera-C 16mm T1.9の登場は、特にコンパクトなシネマカメラやミラーレスカメラを使用する映像クリエイターにとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。超広角でありながら歪曲収差を極限まで抑え、8K対応の高解像度を実現している点は、現代の映像制作において大きなアドバンテージです。広大な風景や建築物の撮影はもちろん、狭い室内でのインタビュー、Vlog、ドキュメンタリーなど、様々なシーンでその真価を発揮します。
市場には数多くのシネマプライムレンズが存在しますが、フルサイズ対応でこれほどコンパクトかつ軽量、そして超広角の選択肢は限られています。例えば、より高価なハイエンドシネマレンズと比較すれば、F値がT1.9である点はわずかながら劣るかもしれませんが、その価格帯と性能のバランスを考慮すれば、Thypoch Simera-C 16mm T1.9は非常に高いコストパフォーマンスを提供します。特に、ジンバルやドローン、手持ちでの撮影といった機動性が求められる現場では、その軽量性とコンパクトさが大きな武器となります。
また、ライカMマウント版の提供は、Lマウント、RF、Z、Xマウントなど、多様なミラーレスシステムへのアダプターを介した対応を可能にし、既存のカメラ資産を活かしつつ、高品質なシネマレンズを導入したいユーザーにとって理想的です。プロフェッショナルなARRIやソニーVENICEといったハイエンドシネマカメラとの互換性も確保されているため、インディーズ映画制作から商業作品まで、幅広いプロジェクトで活躍する可能性を秘めています。このレンズは、単なる広角レンズというだけでなく、映像制作者の表現の幅を広げ、新たな視点をもたらすツールとなるでしょう。
想定されるユーザーシナリオ
- ドキュメンタリー・Vlog制作:軽量で持ち運びやすく、広い画角で臨場感あふれる映像を撮影できます。旅の記録や日常の風景をドラマチックに切り取るのに最適です。
- 建築・不動産撮影:歪曲が少ないため、建物の直線や広大な空間を正確に捉え、物件の魅力を最大限に引き出す映像制作に貢献します。
- ミュージックビデオ・ショートフィルム制作:独特の超広角表現と美しいボケ味を活かし、視覚的に印象的な映像を創造できます。コンパクトなため、限られたスペースでの撮影にも柔軟に対応します。
- ジンバル・ドローン撮影:軽量かつコンパクトな設計により、ジンバルのバランス調整が容易で、DJI Ronin 4Dのような特殊な撮影システムにもスムーズに統合できます。安定した滑らかな映像制作を実現します。
こんな人におすすめ
- 超広角での映像表現を追求したい映像クリエイター
- コンパクトで軽量なシネマレンズシステムを求める人
- ジンバルや手持ちでの撮影が多い映像制作者
- Thypoch Simera-Cシリーズで焦点距離のラインナップを拡充したい既存ユーザー
- 予算を抑えつつ、プロフェッショナルな品質のシネマレンズを導入したいインディーズ映画制作者
よくある質問
Simera-C 16mm T1.9はフルサイズセンサーに対応していますか?
はい、Thypoch Simera-C 16mm T1.9は最大イメージサークル43.2mmを持ち、フルサイズセンサーを完全にカバーします。Super 35やAPS-Cフォーマットのカメラでも問題なく使用可能です。
このレンズはフォーカスブリージングを抑えられていますか?
Thypochによると、Simera-C 16mm T1.9はフォーカスブリージングをほぼゼロに抑える設計が施されています。これにより、ピント位置を変更しても画角の変動が少なく、よりプロフェッショナルな映像表現が可能です。
他のSimera-Cレンズとフィルター径は共通ですか?
Thypoch Simera-C 16mm T1.9のフィルター径はM62×0.75で、これはSimera-Cシリーズの21mm、28mm、35mm、50mmレンズと共通です。ただし、75mmレンズのみM67のフィルター径を採用しています。
DJI Ronin 4Dのようなジンバルで使用できますか?
はい、Thypoch Simera-Cシリーズは、そのコンパクトなサイズと軽量性により、DJI Ronin 4DのZenmuse X9にカウンターウェイトなしで装着できる数少ないシネマレンズの一つです。電子フォーカスアクセサリーとの互換性も明記されており、ジンバル撮影に最適です。
まとめ
Thypoch Simera-C 16mm T1.9の登場は、コンパクトシネマレンズ市場に新たな選択肢をもたらし、特に超広角領域での映像表現を求めるクリエイターにとって待望の製品と言えるでしょう。優れた光学性能、低歪曲、そしてシリーズ全体で一貫した操作性と互換性は、プロフェッショナルな映像制作の現場から、個人のクリエイティブなプロジェクトまで、幅広いニーズに応えるポテンシャルを秘めています。この新たなThypochレンズが、映像制作者たちの創造性をさらに刺激し、多様な映像表現の可能性を広げることに期待が高まります。
情報元:CineD

