プライバシー保護を強化:非同意のプライベート画像削除を義務化する新法とその影響

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2026年5月19日、米国では「Take It Down Act」という新たな法律が施行されました。この法律により、ソーシャルメディアやゲームプラットフォームを含むテック企業は、ユーザーの同意なく共有されたプライベートな画像や動画(非同意の親密な画像、NCII)の削除要請に応じる義務を負うことになります。これは、デジタル空間における個人のプライバシー保護を大きく前進させる画期的な動きであり、被害者が自身のデジタル権利を行使し、プライバシーを守るための重要な手段となります。

「Take It Down Act」の背景と目的

「Take It Down Act」は、メラニア・トランプ元大統領夫人の支援を受け、超党派の支持を得て昨年可決された法律です。その主要な目的は、オンライン上で同意なく共有された個人の親密な画像や動画(NCII)から人々を保護することにあります。近年、インターネットの普及とともに、リベンジポルノやディープフェイク技術を用いたフェイクポルノなど、同意のないプライベート画像の共有が深刻な社会問題となっています。これらのコンテンツは、被害者の精神的苦痛だけでなく、社会生活にも甚大な影響を及ぼすことが少なくありません。

この法律は、ソーシャルメディアやゲームプラットフォームといった広範なオンラインサービスを対象としており、連邦取引委員会(FTC)がプラットフォームの順守状況を監視し、執行する責任を負います。ただし、ブロードバンドサービスは本法律の適用範囲から明示的に除外されています。法律の施行に先立ち、企業には報告システムの構築とリクエストポータルの開発に1年間の猶予が与えられていました。

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プラットフォームに求められるプライバシー保護の義務

「Take It Down Act」の下で、テックプラットフォームは以下の基本的な義務を負います。

  • 報告システムの提供: 同意のない親密な画像や動画を報告するための明確でアクセスしやすい手段をユーザーに提供すること。
  • 迅速な対応: 報告が提出された場合、プラットフォームは48時間以内にその有効性を判断し、有効と判断されれば、報告されたコンテンツとその同一コピーをすべて削除すること。
  • 報告手続きの簡素化: FTCのガイドラインによると、プラットフォームはユーザーが削除リクエストを容易に提出できるように努める必要があります。

コーネル大学ロースクールおよびコーネル・テックの法学教授であるジェームズ・グリメルマン氏は、削除リクエストには最低限、コンテンツの場所を特定できる情報(リンクなど)、同意なくアップロードされた旨の声明、コンテンツに描かれている本人または代理人の署名、そして連絡先情報が含まれる必要があると指摘しています。

主要プラットフォームの対応状況と課題

WIRED誌が本法律にロビー活動を行った14社に取材したところ、多くの企業が法律への支持を表明したものの、具体的な削除リクエストの提出方法については対応にばらつきが見られました。一部の企業は、WIREDからの複数回の問い合わせ後にようやく報告フォームへのリンクを提供したり、取材後にサポートページを更新したりするケースもありました。また、報告フォームを第三者のウェブサイトでホストしている企業もあり、ユーザーが自力でフォームを見つけることを困難にしている可能性が指摘されています。

スタンフォード大学人間中心AI研究所のジェニファー・キング氏は、報告システムの重要性を強調しつつも、企業がそのテストに十分なリソースを投入していない点を懸念しています。特に、報告を行う可能性のあるティーンエイジャーが、法律の専門用語で書かれたフォームを理解しにくい現状があるといいます。

「StopNCII」ツールの活用

多くの大手プラットフォームは、非同意の親密な画像や動画を識別するための業界ツールである「StopNCII」を活用しています。これは英国の非営利団体が管理しており、マッチングアルゴリズムを用いて悪用された画像を特定します。ユーザーはツールのウェブサイトで直接ケースを開き、フラグ付けされるコンテンツを追加することが可能です。Meta(Facebook、Instagram、Threads)、Reddit、TikTok、Snap、Microsoft Bingなどがこのツールに参加していると報じられています。

各社の具体的な対応

Meta(Facebook、Instagram、Threads、Meta AI)

Metaの女性安全責任者であるシンディ・サウスワース氏は、同社が「Take It Down Act」を支持し、すでに数ヶ月前から法律に準拠していると述べています。Metaは、Facebook、Instagram、Threads、Meta AIでのリクエスト提出方法を記載したヘルプページを提供しています。

Microsoft(Bing検索、OneDriveなど)

Microsoftは、Bing検索やOneDriveなどの製品について「懸念を報告」というフォームを設けています。ユーザーはまずコンテンツが掲載されているサービスを特定し、リンクを共有した後、「懸念の種類」として「非同意の親密な画像」を選択します。マイクロソフトのブラッド・スミス副会長兼社長は、この法律がテクノロジーの悪用を防ぎ、個人をデジタル上の危害から保護するための不可欠なツールを提供するとコメントしています。

Google(YouTubeを含む)

Googleの広報担当者は、同社が2015年以来、非同意の親密な画像対策に投資しており、本法律を支持していると述べています。Googleには、一度に最大10個のリンクを提出できる専用の削除リクエストフォームがあり、YouTubeに特化した別のフォームも用意されています。

Reddit

Redditの広報担当者ジェン・モリーナ氏は、同社が「Take It Down Act」の早期支持者であり、法律の要件に完全に準拠するためにシステムを更新したと述べています。ログインユーザーは個々の投稿を報告できるほか、Redditは5月19日にウェブサイトに報告フォームとヘルプセンターの記事を追加しました。

Snap

Snapの広報担当者は、Snapchatユーザーやその他の個人がこの種のコンテンツを報告するためのプロセスを確立していると述べています。同社は、ヘルプページを更新し、法律への言及を含めることで、報告プロセスを案内しています。Snapの一般的な「アカウントまたはコンテンツを報告」フォームでは、「同意なく私のヌード/親密な画像を共有している」または「同意なく私のヌード/親密な画像を漏洩すると脅している」というオプションを選択できます。

LinkedIn

LinkedInの広報担当者は、同プラットフォームが非同意の親密な画像に対して「ゼロトレランス」ポリシーを持っていると述べています。ログインユーザーは、任意の投稿の右上にある3点リーダーをクリックし、「非同意の親密な画像」オプションを選択することでリクエストを提出できます。5月19日からは、アカウントを持たない人もヘルプセンターのフォームを通じて削除リクエストを提出できるようになり、すべての報告は人間がレビューすると付け加えています。

TikTok

TikTok USの広報担当者マフサウ・キュリナン氏は、同社がNCIIの悪用に対してゼロトレランスポリシーを持ち、「Take It Down Act」の早期支持者であったと述べています。ユーザーは、アプリ内の報告ツール(共有ボタンからアクセス可能)からもリンクされているフォームを通じて報告を行うことができます。

Epic Games

Epic Gamesの広報担当者キャット・マコーマック氏は、違法コンテンツ報告フォームツールを通じて削除リクエストを提出できると述べています。このツールは、「Take It Down Act」に準拠するために追加のフィールドで更新される予定です。ユーザーは「サイバー暴力」または「女性に対するサイバー暴力」を選択し、その後「非同意の(親密な)素材共有」または「ディープフェイクまたは類似技術を含む素材の非同意共有」オプションを選択して報告します。

Roblox

Robloxでは、アプリ内の「虐待を報告」メニュー項目またはヘルプセンターの報告フォームを通じて削除リクエストを提出できます。Robloxのグローバル公共政策責任者であるニッキー・ジャクソン・コラコ氏は、同社が「Take It Down Act」の可決を支持しており、その目的に完全に合致していると述べています。Robloxはチャットを通じて画像や動画を交換することは許可していませんが、ユーザーが作成し共有する3Dワールド(エクスペリエンス)や開発者フォーラムでは画像や動画をアップロードできるため、専用の報告機能が導入される予定です。

Bumble

出会い系アプリBumbleの信頼・顧客体験担当副社長であるエリマエ・セデニョ氏は、同社がNCIIを「非常に深刻に受け止めており、『Take It Down Act』の可決を支持した」と述べています。誰でもヘルプセンターに含まれるフォームを通じて削除リクエストを提出でき、報告は迅速にレビューされ、「安全性とプライバシーを優先して緊急かつ慎重に」処理されるとのことです。

対応しなかった企業

一方で、イーロン・マスク氏率いるX Corp.(旧Twitter)、Proton AG、Verizonは、WIRED誌からの再三の問い合わせに対し、回答を拒否したと報じられています。特にX Corp.は、そのAIチャットボット「Grok」がユーザーの指示により数千もの非同意の女性の画像を生成・投稿したとして、今年初めに国際的な批判を浴びていました。

デジタル権利とプライバシー保護の強化

「Take It Down Act」の施行は、個人のデジタルプライバシー保護における重要な転換点と言えます。これまで、同意なく共有されたプライベート画像の削除は、被害者自身がプラットフォームに個別に交渉し、その対応もまちまちであることが少なくありませんでした。しかし、この法律により、プラットフォーム側が明確な法的義務を負うことで、被害者がより迅速かつ確実にコンテンツの削除を求める道が開かれました。

ユーザーへのメリットと注意点

この法律の最大のメリットは、被害者が自身の尊厳とプライバシーを取り戻すための強力な法的ツールが提供された点にあります。プラットフォームが削除要請に迅速に対応する義務を負うことで、精神的苦痛の軽減や二次被害の防止につながることが期待されます。

一方で、課題も残されています。前述の通り、各プラットフォームの報告フォームの分かりやすさやアクセスしやすさには依然としてばらつきがあります。また、ディープフェイクなどAIによって生成された偽の親密な画像への対応も、今後の重要な論点となるでしょう。被害者は、報告の際にはコンテンツのリンクやスクリーンショットなどの証拠を可能な限り詳細に記録しておくことが重要です。プリンストン大学情報技術政策センターのアレハンドロ・クエバス氏は、メールでの報告の場合、提出者が一つでも要件を満たさないと、企業がリクエストの順守を拒否したり遅延させたりする口実になりかねないと指摘しています。

業界への影響と今後の展望

テック業界全体としては、この法律の施行により、コンテンツモデレーション体制の強化が不可避となります。報告システムの改善、人間のモデレーターの増員、AIを活用した検出技術の導入など、多岐にわたる投資が求められるでしょう。これにより、プラットフォームの運営コストが増加する可能性もありますが、ユーザーからの信頼獲得やブランドイメージ向上には不可欠な投資と言えます。

また、この法律は米国で施行されたものですが、同様の動きは世界各国に広がる可能性を秘めています。デジタル技術の進化、特に生成AIの急速な発展は、同意のないプライベート画像の生成と拡散をさらに容易にする恐れがあります。そのため、今後も技術の進歩と並行して、個人のデジタル権利とプライバシー保護に関する法整備や業界ガイドラインの策定が、国際的な協力のもとで進められていくことが予想されます。

こんな人におすすめ

  • 非同意で共有されたプライベート画像に悩んでいる人
  • 自身のデジタルプライバシー保護に関心がある人
  • SNSやオンラインサービスを安全に利用したい人

まとめ

「Take It Down Act」は、デジタル時代における個人のプライバシー保護を大きく前進させる重要な法律です。これにより、テックプラットフォームは非同意の親密な画像の削除に対し、より明確な法的責任を負うことになります。主要なSNSやゲーム会社が対応を進める一方で、報告システムの使いやすさや、AI生成コンテンツへの対応など、まだ改善の余地があることも明らかになっています。今後も、テクノロジーの進化と社会のニーズに応じた、より強固なデジタルプライバシー保護の枠組みが構築されていくことが期待されます。

情報元:wired.com

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