朋栄、Software-Defined転換:次世代基盤IMPULSEとAIソリューションの衝撃

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映像制作機器の老舗メーカーである朋栄が、長年培ってきたハードウェア中心の事業戦略から「Software-Defined」とAIソリューションへの大胆な転換を加速させています。これは、映像制作業界が直面するIP化や自動化の波に対応し、未来のワークフローを再定義しようとする同社の明確な意思表示と言えるでしょう。特に、次世代ライブ制作基盤「FOR-A IMPULSE」と、日本テレビと共同開発したAIソリューション「viztrick AiDi」は、今後の映像制作のあり方を大きく変える可能性を秘めています。

朋栄が推進するSoftware-Defined戦略の核心

朋栄はこれまで、高性能なビデオスイッチャーやプロセッサーといったハードウェア製品で業界を牽引してきました。しかし、近年、映像制作の現場ではIP化の進展や、より柔軟で効率的なワークフローへのニーズが高まっています。これに応えるため、同社はハードウェアの枠を超え、ソフトウェアとAIを軸としたソリューション提供へと大きく舵を切っています。

ハードウェアからソフトウェアへ、転換の背景

従来の映像制作システムは、ビデオスイッチャー、マルチビューア、オーディオミキサーなど、それぞれの機能が専用のハードウェアとして存在し、ケーブルで接続されていました。この構成は信頼性が高い一方で、システム構築に時間とコストがかかり、機能変更や拡張のたびに物理的な配線変更が必要となるなど、柔軟性に欠けるという課題がありました。また、各機器を経由するたびに信号遅延が累積し、特にライブ制作においては大きな問題となることも少なくありませんでした。

「Software-Defined」とは、こうしたハードウェアの機能をソフトウェアで実現し、汎用的なサーバー上で動作させる概念です。これにより、物理的な制約から解放され、必要な機能をソフトウェアで自由に組み合わせたり、簡単に設定変更したりすることが可能になります。朋栄のこの戦略転換は、単に製品ラインナップを変えるだけでなく、映像制作のワークフローそのものを根本から変革しようとするものです。

次世代ライブ制作基盤「FOR-A IMPULSE」の全貌

今回の展示で最も注目を集めたのが、次世代ライブ制作基盤「FOR-A IMPULSE」です。これは、ST 2110ベースのIP環境を前提とし、「STATION IN A BOX」というコンセプトのもと、ライブ制作に必要なあらゆる機能をソフトウェアで統合する画期的なシステムです。

「STATION IN A BOX」コンセプトと機能統合

IMPULSEは、ビデオスイッチャー、シーンエディター、マルチビューア、オーディオミキサー、カラーコレクターといった多岐にわたる機能を一つのシステムに集約します。これにより、これまで個別の機器で行っていた設定の保存や呼び出し、管理を一元的に行えるようになります。例えば、番組の切り替えやイベントの内容変更があった場合でも、ソフトウェア上でテンプレートを読み込むだけで瞬時にシステム構成を再構築できるため、セットアップ時間の短縮とオペレーションの簡素化に大きく貢献します。

この機能統合は、設備投資の最適化にもつながります。複数の専用ハードウェアを購入・維持する代わりに、汎用サーバーとIMPULSEソフトウェアで多くの機能を賄えるため、初期導入コストの削減や、将来的な拡張・更新の柔軟性が向上します。特に、限られた予算で高品質なライブ制作環境を構築したい中小規模のプロダクションや、イベント会場での仮設システム構築において、そのメリットは大きいでしょう。

圧倒的な低遅延と視覚的な統合制御

IMPULSEの大きな特長の一つが、その圧倒的な低遅延性能です。従来のハードウェア構成では、映像信号が複数の機器を通過するたびに遅延が累積し、これがライブ制作においてリップシンクのズレやオペレーターの操作感覚に影響を与えることがありました。しかし、IMPULSEはすべての処理を内部で完結させるため、入力から出力まで一貫して約2フレームという極めて低い遅延を実現しています。これは、スポーツ中継や音楽ライブなど、リアルタイム性が重視される現場で非常に重要な要素となります。

システム構築と管理は、「グラフエディター」と呼ばれる直感的なGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)上で行われます。このエディターでは、各機能を「ノード」、それらの接続を「パイプライン」として視覚的に表現し、ドラッグ&ドロップ操作で自由にシステムを構築できます。従来、ラックへの機器設置や複雑なケーブル配線が必要だった作業が、すべて画面上の操作で完結するため、セットアップの効率が飛躍的に向上します。また、IPマルチキャストの特性を活かし、単一の映像ソースを複数の場所で同時に利用するといった柔軟な運用も可能です。対応プロトコルもST 2110に加え、SRT、NDI、Danteなど主要なものを網羅しており、既存のIP環境との親和性も高く、スムーズな導入が期待されます。

Aveco社との連携によるオートメーション機能の進化

今回のNABでの発表で特に注目されたのが、欧州のオートメーション大手であるAveco社との連携による機能強化です。IMPULSEは、この連携により、番組テンプレートに基づいたスケジュール管理、CM切り替え、テロップ挿入、さらには外部機器の制御までを自動化できるオートメーション機能を実装しました。これにより、オペレーターの負担を大幅に軽減し、人為的ミスを減らしながら、より効率的で安定したライブ制作ワークフローを実現します。

このオートメーション機能は、放送局のマスターコントロールルームだけでなく、スポーツイベント、企業イベント、教育機関での配信など、様々なシーンで活用が期待されます。例えば、スポーツ中継において、試合の進行に合わせて自動的にCMを挿入したり、スコア表示を切り替えたりすることが可能になります。これにより、限られた人員で高品質なコンテンツを安定して制作・配信できるようになり、放送以外の市場への展開も視野に入っています。

ソフトウェアベーススイッチャー「MixBoard」の登場

IMPULSEがハイエンドな統合ライブ制作基盤である一方、より幅広いユーザー層をターゲットにしたのが、参考出展された「MixBoard」です。これは完全にソフトウェアベースで動作するスイッチャーで、直感的でシンプルなGUIが特長です。専門的な知識がなくても基本的なスイッチング操作が可能となるよう設計されており、小規模なイベント配信や企業内での動画制作、教育現場など、これまで専用ハードウェアの導入が難しかった層にも、高品質なスイッチング環境を提供する可能性を秘めています。

進化を続けるハードウェア製品群

Software-Definedへの転換を加速する一方で、朋栄は長年の基盤であるハードウェア製品の進化も着実に進めています。これは、SDI(Serial Digital Interface)需要が依然として強いグローバル市場のニーズに応えるとともに、IP環境への段階的な移行を支援する上で重要な役割を果たします。

12G-SDI対応ビデオスイッチャー「HVS-Q12」の特長

「HANABI」シリーズの最新機種である12G-SDI対応ビデオスイッチャー「HVS-Q12」は、4月にリリースされた完成版として展示されました。HVS-Q12は、SDI環境での4K制作に対応し、高い拡張性を備えています。オプションボードを追加することで、12G 4K対応はもちろん、HD環境では最大60出力まで拡張可能です。また、NDIやDanteといったIPプロトコルにも対応しており、SDIとIPが混在するハイブリッド環境での運用にも柔軟に対応できます。ブラウザベースのGUIを搭載しているため、オフライン環境での事前設定も可能で、現場でのセットアップ時間を短縮し、効率的な運用をサポートします。

SDIは、IPに比べてシンプルな配線で安定した運用が可能であるため、特に設備投資を抑えたい現場や、既存のSDI資産を有効活用したいユーザーにとっては、依然として魅力的な選択肢です。HVS-Q12は、こうしたSDIの強みを活かしつつ、将来的なIP移行も見据えた設計となっており、ユーザーの多様なニーズに応える製品と言えるでしょう。

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マルチチャンネルプロセッサー「FA-1616」の将来性

マルチチャンネルプロセッサー「FA-1616」シリーズには、将来を見据えた重要なアップデートが予定されています。従来の10G/25Gに加え、100Gイーサネットへの対応が計画されており、これにより大規模なIP環境における処理能力と接続性が大幅に強化されます。大規模な放送局やイベント会場など、膨大な量の映像データを扱う現場では、100G対応はシステムのボトルネック解消に不可欠な要素となります。

さらに、プロセッシング機能を限定したIPゲートウェイモデルが新たに追加される予定です。これは、既存のSDIシステムからIP環境への段階的な移行を検討しているユーザーにとって非常に有用な選択肢となります。まずはIPゲートウェイとして導入し、必要に応じてソフトウェアアップデートでフル機能へと拡張できるため、初期投資を抑えつつ、将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できるのが特長です。これにより、ユーザーは自身のペースでIP移行を進めることができ、設備投資のリスクを最小限に抑えることが可能になります。

AIソリューション「viztrick AiDi」が切り拓く新たな動画制作

朋栄のSoftware-Defined戦略を補完するもう一つの柱が、日本テレビと共同開発したAIソリューション「viztrick AiDi」です。これは、NVIDIAのAIインフラ上で動作するオンデバイスAI技術を採用し、クラウドを介さない低遅延処理を実現することで、リアルタイムでの映像解析と自動生成を可能にします。

NABでの受賞とオンデバイスAIの優位性

viztrick AiDiは、その画期的な技術が評価され、NABのストリーミング部門で「Product of the Year」を受賞しました。特に「GoVertical! AiDi」機能は、リアルタイム自動追跡と9:16自動クロッピングにより、ライブストリーミングにおける縦動画生成を独自に実現する点で高い評価を受けました。

オンデバイスAIの最大の優位性は、クラウドサーバーとの通信を必要としないため、極めて低い遅延で処理が完結する点にあります。これにより、ライブイベントやスポーツ中継など、一瞬の遅れも許されない現場で、AIによるリアルタイム処理を安心して利用できます。また、クラウド利用に伴う通信コストやセキュリティリスクを低減できる点も大きなメリットですS。

リアルタイム自動クロッピングとスコアボード認識機能

viztrick AiDiのデモンストレーションの中心となったのは、リアルタイム9:16自動クロッピング機能です。これは、16:9などの横長映像からAIが被写体(人物やボールなど)を自動で追跡し、最適な構図を維持したまま縦動画を生成するものです。近年、スマートフォンでの視聴が増加し、TikTokやYouTube Shortsといった縦型動画プラットフォームの需要が高まる中、この機能はSNS向けコンテンツの制作において非常に強力なツールとなります。ライブイベントやニュース速報など、即時性が求められる場面で、手動での編集作業なしに高品質な縦動画を生成できるため、コンテンツ制作のスピードと効率が飛躍的に向上します。

さらに、スコアボード認識機能も高い実用性を示しました。スタジアムに設置されたスコアボードを一台のカメラで捉えるだけで、AIがチーム名、得点、カウント、球速などの情報を自動で認識し、これをリアルタイムでCGとして映像に反映させることができます。これにより、これまでオペレーターが手動で行っていたデータ入力作業が不要となり、制作現場の負担を大幅に軽減します。人為的な入力ミスも防ぐことができ、より正確でスピーディーな情報表示が可能になります。すでに東京ドームの館内モニターで無人運用の実績があるとされており、その信頼性は実証済みです。

日本テレビとの連携と今後の展開

viztrick AiDiは、日本テレビでの運用を前提に開発されたソリューションであり、その開発は日本テレビが担当しています。朋栄は、この革新的なAIソリューションを国内外の市場に展開する役割を担っています。NVIDIAとのパートナーシップも強化されており、この技術は今後、IMPULSEをはじめとする朋栄のSoftware-Defined型製品への展開も進む見込みです。これにより、AIがライブ制作ワークフローにさらに深く統合され、映像制作の自動化と効率化が一段と加速することが期待されます。

朋栄の戦略転換が映像制作業界にもたらす影響

朋栄のSoftware-DefinedとAIソリューションへの転換は、単に同社のビジネスモデルの変化に留まらず、映像制作業界全体に大きな影響を与える可能性を秘めています。これは、より柔軟で効率的、そしてコストパフォーマンスに優れた制作環境へのニーズが高まる中で、業界が目指すべき方向性を示唆するものです。

ユーザーへのメリット:効率化と柔軟性

この戦略転換がユーザーにもたらす最大のメリットは、ワークフローの劇的な効率化と、システムの柔軟性の向上です。Software-Definedなシステムは、物理的な機器の制約から解放されるため、必要な機能をソフトウェアで自由に選択・組み合わせることができ、システムの拡張や変更が容易になります。これにより、制作内容や予算に応じて最適なシステムを構築し、将来的なニーズの変化にも迅速に対応できるようになります。

また、AIソリューションの導入は、これまで人手に頼っていた作業を自動化し、制作現場の負担を軽減します。例えば、viztrick AiDiのような自動クロッピングやスコアボード認識機能は、コンテンツ制作のスピードを向上させ、より多くの高品質なコンテンツを効率的に生み出すことを可能にします。これは、特に人手不足が深刻化する映像制作業界において、喫緊の課題解決に貢献するでしょう。

導入における課題と今後の展望

一方で、この転換にはいくつかの課題も伴います。Software-Definedシステムへの移行には、既存のハードウェア資産との互換性や、IPネットワークインフラの整備、そして新しいシステムを運用できる人材の育成が不可欠です。特に、長年ハードウェア中心で運用してきた現場にとっては、新しい技術への適応には時間とコストがかかる可能性があります。

しかし、朋栄が提供するIPゲートウェイモデルのように、段階的な移行を支援するソリューションも用意されており、これらの課題を克服しながら、業界全体がSoftware-DefinedとAIの恩恵を享受していくことになると考えられます。朋栄の今回の発表は、映像制作の未来が、よりソフトウェアとAIに深く根ざしたものになることを明確に示しており、今後の同社の動向、そして業界全体の進化に一層の注目が集まるでしょう。

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まとめ

朋栄がNAB2026で示した「Software-Defined」とAIソリューションへの大胆な転換は、映像制作業界の未来を象徴する重要な動きです。次世代ライブ制作基盤「FOR-A IMPULSE」は、機能統合、低遅延、オートメーションにより、ライブ制作のワークフローを根本から変革する可能性を秘めています。また、日本テレビと共同開発したAIソリューション「viztrick AiDi」は、オンデバイスAIによるリアルタイム処理で、SNS向けコンテンツ制作やスポーツ中継の効率化に大きく貢献します。これらの革新的な技術は、従来のハードウェアの枠を超え、より柔軟で効率的な映像制作環境を実現し、業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させることでしょう。朋栄の今後の展開が、映像コンテンツの未来をどのように形作っていくのか、引き続き注目が必要です。

情報元:PRONEWS

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