チリのエル・サウセ天文台で、世界最大の全レンズ望遠鏡「MOTHRA(Massive Optical Telephoto Hyperspectral Robotic Array)」の建設が進められています。この革新的なプロジェクトは、なんと1,140個ものCanon EF 400mm f/2.8L IS望遠レンズを駆使し、宇宙に広がるダークマターの謎を解き明かすことを目指しています。
1,140個のキヤノンレンズが織りなす「MOTHRA」の全貌
MOTHRAは、イェール大学の天文学者ピーテル・ファン・ドックム氏とトロント大学のロベルト・エイブラハム氏が主導するプロジェクトです。彼らは以前、24個のCanon EF 400mm f/2.8レンズを使用した「Dragonfly Telephoto Array」を開発しており、MOTHRAはその成功をさらに大規模に発展させたものです。
MOTHRAは、30基の異なるマウントにそれぞれ38個のレンズを配置し、合計1,140個のCanon EF 400mm f/2.8L ISレンズで構成されます。これにより、単一の4.7メートル級望遠鏡に匹敵する集光力を実現。各レンズにはSony IMX571およびIMX455 CMOSイメージセンサーを搭載したApx26またはApx60カメラが組み合わされています。
なぜ「Canon EF 400mm f/2.8L IS」が選ばれたのか?
研究チームがこの特定のキヤノンレンズを選んだ理由は、その「卓越した光学性能と優れた反射防止コーティング」にあります。さらに、最新のRFマウントではなくEFマウントが選ばれたのは、EFマウントのバックフォーカス距離がアクセサリーの使用に有利であるためと説明されています。チームは「このレンズファミリーとは10年以上の経験があり、その品質とキヤノンからのサポートに常に満足している」と語っています。
宇宙の「見えない網」ダークマターを探る
MOTHRAの最大の目的は、宇宙で最もかすかな光、特に銀河間に広がる拡散電離ガスを検出することです。この電離ガスを観測することで、これまで直接観測されたことのない「ダークマター」の位置を特定する手がかりを得ようとしています。
ファン・ドックム氏によると、「すべての銀河は、目に見えない巨大な宇宙の物質の網によってつながっている。我々はその最初の写真を撮る望遠鏡を建設したい」とのこと。ダークマターは、銀河の形成と進化を司る「宇宙の網」のような役割を果たすと考えられていますが、その存在は理論上のものであり、直接的な観測は極めて困難でした。MOTHRAは、電離ガスを観測することで、この謎多き物質の姿を浮かび上がらせることを目指しています。
MOTHRAは既に美しい観測結果を出しており、例えば、銀河NGC 253や超新星残骸RCW 114(通称「ドラゴンの心臓星雲」)の電離水素光での画像が公開されています。
市販レンズが切り開く天文学の新時代
MOTHRAプロジェクトは、市販の高性能レンズを多数組み合わせることで、従来の巨大な一枚鏡望遠鏡では実現が難しかった広視野かつ高感度な観測を可能にしています。これは、天文学研究における新たなアプローチを示唆しており、高価な特注光学系に頼らずとも、既存の技術を組み合わせることで画期的な成果を生み出せる可能性を示しています。
このアプローチは、開発期間の短縮にも貢献しており、エイブラハム氏は「天文学者が長年望んできた、宇宙の網を直接観測する実用的な方法を、数十年ではなく数年で実現する野心的なプロジェクトだ」と述べています。光学、検出器、コンピューティング能力の進歩を組み合わせることで、宇宙を全く新しい方法で探求する道が開かれています。
まとめ
Canon EF 400mm f/2.8L ISレンズ1,140個という驚異的な規模で建設が進むMOTHRA望遠鏡は、ダークマターという宇宙最大の謎の一つに挑む画期的なプロジェクトです。市販の高性能レンズを最大限に活用するこのアプローチは、天文学研究の新たな地平を切り開くとともに、私たちの宇宙観を大きく変える可能性を秘めています。年内の完成が予定されており、MOTHRAが今後どのような発見をもたらすのか、その動向に注目が集まります。
情報元:PetaPixel

