ゲーム業界に激震が走っています。大手ゲームパブリッシャーであるエレクトロニック・アーツ(EA)が、サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)、著名なプライベートエクイティ企業シルバー・レイク、そしてドナルド・トランプ元大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が率いる投資会社アフィニティ・パートナーズを含む投資家コンソーシアムに売却されることで合意しました。
この取引は、EAを非公開企業(プライベートカンパニー)に移行させるものであり、その評価額はなんと**550億ドル(約8.2兆円)**に上ります。これは、ゲーム業界史上類を見ない規模の買収であり、史上最大のレバレッジド・バイアウト(LBO)としても記録を更新する見込みです。
■ 買収の背景にあるプレイヤーたちの思惑
今回の買収劇には、それぞれ異なる思惑を持つ強力なプレイヤーが関わっています。
• サウジアラビア政府系ファンド(PIF):
すでにEA株の10%近くを保有していたPIFは、今回の取引で既存の株式を非公開企業の新株に転換します。PIFは「ビジョン2030」のもと、脱石油経済の一環としてゲーム産業への投資を加速させており、この買収は彼らの世界的なゲーム大国化計画における最大の布石と言えるでしょう。
• シルバー・レイク:
テック企業への投資で知られるこのプライベートエクイティ企業は、今回の買収に大きな役割を果たしています。彼らの専門知識と資金力が、EAの新たな成長戦略を後押しすると見られています。
• ジャレッド・クシュナー氏とアフィニティ・パートナーズ:
トランプ政権で上級顧問を務めたクシュナー氏が設立したアフィニティ・パートナーズは、中東の政府系ファンドから巨額の資金援助を受けていることが報じられています。クシュナー氏は声明で「EAの象徴的で永続的な体験を生み出す能力を尊敬している。自身もEAのゲームで育ち、今は子どもたちと楽しんでいる」と語り、取引に対する熱意を示しました。
■ EAの未来はどうなる?
今回の非公開化によって、EAは四半期ごとの収益報告や市場の変動といった短期的なプレッシャーから解放されます。これにより、長期的な視点で大型タイトルの開発や、より大胆な事業改革が可能になると考えられます。
また、既存の経営陣、特にアンドリュー・ウィルソンCEOは引き続きその職に留まる予定であり、本社の所在地もカリフォルニア州レッドウッドシティから変更はありません。
しかし、プレイヤーの間では、今後のゲーム開発やサービスにどのような影響が出るのか、期待と不安が入り混じった声が上がっています。特に『Madden NFL』や『バトルフィールド』といった主力タイトルが、新しいオーナーシップのもとでどのような変化を遂げるのか、多くの注目が集まっています。
この歴史的な取引は、2027年第1四半期に完了する見通しです。規制当局の承認や株主の投票といった手続きを経て、最終的にどのような形で決着するのか、引き続き動向を注視していく必要があります。

