DJI、米国防総省の「中国軍事企業リスト」指定を巡る訴訟で敗訴。今後のドローン規制への影響は?

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世界最大のドローンメーカーであるDJIが、米国防総省(ペンタゴン)による「中国軍事企業」リストへの指定を不服として起こした訴訟で、敗訴したことが明らかになりました。
今回の判決は、DJIの米国事業だけでなく、世界のドローン市場やユーザーにどのような影響を与えるのでしょうか。

なぜDJIは「中国の軍事企業」と見なされたのか?

今回の訴訟の発端は、米国防総省がDJIを「中国軍事企業(Chinese military company)」のリストに加えたことにあります。
DJI側は、「我々は中国軍によって所有も管理もされておらず、消費者向けのドローンを製造しているに過ぎない」と主張し、この指定の取り消しを求めていました。

しかし、コロンビア特別区連邦地方裁判所のポール・フリードマン判事は、国防総省の主張を支持する判決を下しました。
その最大の根拠となったのが、中国が国家戦略として推進する「軍民融合(Military-Civil Fusion)」へのDJIの関与です。

軍民融合とは、民間企業の技術やリソースを軍事目的にも活用し、国全体の防衛力を強化しようという戦略です。
裁判所は、DJI自身が過去に提出した書類の中で、自社の技術が軍事転用可能であることや、中国の軍民融合プロジェクトに参加していることを認めていた点を指摘しました。

フリードマン判事は判決文の中で、「DJIが自社のポリシーで軍事利用を禁止しているかどうかは問題ではない。DJIの技術が理論的にも実際的にも、実質的な軍事用途を持つという事実は変わらない」と述べており、DJIの主張を退けました。

判決がもたらす具体的な影響とは?

この「中国軍事企業」リストへの掲載は、直ちにDJI製品の米国内での販売が禁止されることを意味するものではありません。しかし、以下のような深刻な影響が懸念されます。

  • 投資の禁止: 米国の投資家がDJIの株式などを取引することが禁止される可能性があります。これにより、企業の資金調達が困難になる恐れがあります。
  • 政府調達からの排除: 連邦政府機関との契約や、政府からの補助金、融資といったプログラムへの参加が制限されます。
  • 信頼性の低下: 「軍事企業」というレッテルは、企業の評判に傷をつけ、ビジネス上の取引において不利に働く可能性があります。

DJIはこれまでにも、2020年に商務省の「エンティティリスト」に追加され、米国企業との取引が事実上ブロックされるなど、米国政府からの厳しい視線にさらされてきました。
今回の敗訴は、同社にとってさらなる逆風となることは間違いありません。

今後の展望とドローンユーザーへの影響

DJIは判決に対し、「失望している」との声明を発表し、今後も法的な選択肢を検討していく構えを見せています。

一方で、米国ではDJI製品の輸入を全面的に禁止する法案も議論されており、今回の司法判断がその動きを加速させる可能性も否定できません。
もし輸入禁止となれば、米国のドローン市場で圧倒的なシェアを誇るDJI製品が手に入りにくくなるだけでなく、農業、測量、インフラ点検、映像制作といった幅広い分野でドローンを活用しているユーザーにとっても大きな影響が出ることが予想されます。

テクノロジーと国家安全保障の問題が複雑に絡み合う今回の判決。世界のドローン業界のリーディングカンパニーであるDJIが、この困難な状況をどう乗り越えていくのか、今後の動向から目が離せません。

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